アウフグースは、サウナの中で“風を贈る”芸術。
熱、香り、リズム、間合いが織りなすひとつの体験です。
この記事では、ドイツ発祥のアウフグース文化の歴史と、“人に熱を贈る”という哲学を紹介します。
🔸 はじめに
サウナの中でタオルを振る──それだけで終わるなら、アウフグースはただのパフォーマンスかもしれません。
しかし実際のアウフグースは、「熱」と「風」と「香り」を使い、人に体験を贈る行為です。
つまり、アウフグースとは**“熱の演出”であり、感覚のアート**なのです。
🔸 アウフグースの起源
アウフグース(Aufguss)は、ドイツ語で「注ぐ」「注入する」という意味。
もともとはドイツや北欧のサウナ文化の一部として発展し、ロウリュ(löyly)と呼ばれる蒸気発生の儀式から派生しました。
ドイツではこれが独自の進化を遂げ、**アウフギーサー(Aufgießer)**と呼ばれる専門スタッフが誕生。
香り、音楽、照明、そしてタオルの動きで、サウナ室をひとつの“ステージ”に変える文化へと発展しました。
🔸 熱波は「力」ではなく「調和」で伝える
初心者がよく誤解しがちなのが、「強くタオルを振る=熱い風が届く」という考え。
実際には、アウフグースは力ではなく空気のコントロールです。
風を滑らかに導き、壁や天井にぶつかる熱流をどう返すか。
空間全体の空気をどう動かすかによって、同じ温度でも体感がまったく変わります。
つまりアウフグースとは、**“見えない空気のデザイン”**でもあるのです。
🔸 香りと感情のリンク
アウフグースの体験は、香りによって大きく変化します。
たとえば、ユーカリの清涼感は呼吸を深くし、イランイランの甘さはリラックスを誘います。
香りが変われば、空間の“感情”が変わる。
これはまさに、五感に働きかける演出。
香り、温度、風、光──それらが一体になったとき、人は“整う”のです。
🔸 アウフギーサーの哲学
優れたアウフギーサーは、単に技を磨くだけでなく、
「人に熱をどう届けるか」「どんな気持ちで受けてもらいたいか」を常に考えています。
タオルを振るたびに、誰かの疲れを癒し、日常のストレスを風とともに流す。
アウフグースは**“おもてなしの延長線上にある技術”**でもあるのです。
🔸 クラシックとショーの違い
アウフグースには大きく分けて、
- クラシックアウフグース(静かな空間で香りと風を味わうもの)
- ショーアウフグース(音楽や照明を合わせた演出型)
の2つがあります。
どちらが優れているというわけではなく、
**「どんな場面で、どんな体験を届けたいか」**によって選ばれるものです。
🔸 終わりに ― 熱と風の芸術として
アウフグースは、単なる“熱波”ではありません。
それは、サウナという空間を使った即興の芸術であり、
風と香りを通して人の心に触れる“コミュニケーション”です。
このシリーズ「アウフグース虎の巻」では、
今後、タオルワーク、香り設計、演出構成、クールダウンなど、
一つひとつの要素を体系的に学んでいきます。
🪶 一言まとめ
アウフグースとは、「熱」と「風」と「心」で人を包む体験である。
